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02.03 / 学校、仕事、買い物、遊び。 生活は、ちゃんと複雑だ。

03

食事 / ARC–12 水・食料街区

月産フードの夕方。
閉じた都市ほど、食卓は多様になる。

月の食事は栄養チューブではない。焼く音、発酵の匂い、季節の代わりに届く収穫予定。限られた資源のなかで、食べたいものを選べることが都市の豊かさになる。

食料は生命維持装置である前に、誰かと今日を話すための場所だ。
01

市場の旬は、栽培室の予定表で決まる。

18時10分、市場の入口に「今週は赤い葉物が多い」と表示される。地下には四季がないため、旬は光量、栽培棚の空き、受粉作業、収穫の順番から生まれる。同じ野菜が続けば、料理人たちは漬ける、乾かす、発酵させる方法を競う。

店頭には月産、小惑星圏産、地球産の表示がある。地球産の果物やカカオは贈り物に近い。高価だからではなく、輸送に使われた時間とエネルギーごと味わう食品だからだ。

市場の旬は、栽培室の予定表で決まる。
VISUAL FIELD NOTE

市場の旬は、栽培室の予定表で決まる。

02

きのこは肉の代用品ではない。

夕食の主菜は、菌糸を層状に育てて焼いたもの。地球の肉を真似るのではなく、月の食材として歯ごたえや香りを調整する。藻類を練り込んだ麺、発酵豆のソース、温室ハーブが、家庭ごとの味をつくる。

レシピは地球の国境どおりには分かれない。移住者が持ち込んだ味と、月で手に入る素材が混ざり、数世代後には「どこの国の料理か」より「どの街区の味か」で語られるようになる。

きのこは肉の代用品ではない。
VISUAL FIELD NOTE

きのこは肉の代用品ではない。

03

食べ残しにも、行き先が表示される。

食後、トレーを返却台へ置くと、容器、残渣、水分に分けて回収される。画面には「この水は明日の洗浄工程へ」「有機物は培地処理へ」と行き先が出る。循環率は管理者だけの数字ではなく、食べた人が参加する日常の手続きだ。

それでも、誕生日のケーキや失敗した新メニューまで効率だけで決めない。余裕を持たない都市は長く暮らせない。少しの無駄を許せることも、10万人の街が基地から都市になった証拠になる。

食べ残しにも、行き先が表示される。
VISUAL FIELD NOTE

食べ残しにも、行き先が表示される。

この時間の都市データ

日常の主役
温室・発酵・菌糸
希少な味
地球産の果物とカカオ
食後
容器・水・有機物を回収